2011年7月15日金曜日

「空手で食える」を信じて渡米したら…

鵜呑みにすることも時には重要な事なんだと思います。それで何かがチェンジするかもしれないからね

●生島ヒロシ氏(フリーアナウンサー)
 大学時代、空手同好会に入っていたんです。その同好会の顧問から「俺のアシスタントとしてアメリカに行かないか」と誘われたのが大学2年生のとき。学生運動に足を突っ込んだものの続けていけず挫折し、落ち込んだ日々を送っていたところでしたから、二つ返事で「行きます!」と答えました。ところが、なかなか計画は実行されない。業を煮やした僕は、こうなったら一人で行こうと決心したんです。当時は、今と違って情報も少なく、もちろん現地に知り合いもいません。それでも何とかなるサ、と思ったのは実は、松方弘樹氏の実弟・目黒祐樹さんの「モーレツ野郎 in America」(日芸出版 絶版)にハマったからなんですよ。
 つづられる夢のような留学生活に憧れを持ったのはもちろんとして、僕の目を引いたのが「空手が出来ればアメリカで食っていける」の言葉。すっかり信用した僕は、「僕も空手のキャリアがある。何とかなる!」と、単身渡米したんです。
 しかし、現実は厳しかった。ハワイに到着し、タクシーをつかまえ「極真空手の道場に行きたい」と告げると、「先週、クローズしたよ」というではありませんか。もう目の前が真っ暗になりましたね。そこから所持金数百ドル、コネなしの僕の悪戦苦闘の4年間が始まったのです。
 ハワイ、シスコ、ロスへと移りながら、ディズニーランドホテルのハウスキーパー、イチゴ摘み、皿洗い……。ロスで空手ショーと稽古を請け負ったものの、ノーギャラだし、確保するといわれた寝床は道場の畳、食事はナシ。4年間で何度「目黒さん、嘘ばっかり!」と思ったか分かりません(笑い)。でも最後は無事、カリフォルニア州立大学を卒業。苦労した分、自分のペースで生きる大切さを学んだことを思えば、この本に出合えたことに感謝です。