2011年6月5日日曜日

AKB48総選挙ってなに? 当選ってなに? CDをたくさん買う理由は?

結果なんてどうでもいいって話なんだけどファンの人は今頃毎日ワクワクしているんでしょかね?まあ精々頑張ればいいんじゃないですか?

今年もAKB48の選抜総選挙の投票時期を迎えた。3回目となる今年の総選挙では、投票開始の翌日(25日)にさっそく投票速報が出されたものの、昨年まで選挙期間の折り返しに行なわれていた中間発表は実施されないということなので、開票まで大勢はわからない。何より今回は“候補者”も、AKB48と名古屋・栄を拠点とするSKE48に、今年年明けから大阪・なんばで劇場公演を始めたNMB48のメンバーが加わり総計152名と大幅に増えたので(昨年の104名から約1.5倍増)、なおさら激戦が予想されている。

開票日は6月9日だが、それを挟んで5月24日~6月12日には、東京ドームシティホールにて「見逃した君たちへ」と題して連日、これまでAKB48グループ(先の3グループ+秋葉原のAKB48劇場にて土曜夜に公演を実施しているSDN48)が各劇場で行なってきた全公演の再上演も予定され、ファンにとってはしばらく祭りが続くことになる。

……と、ここまで何の注釈もなく、“AKB48選抜総選挙”という言葉を使ってみたけれども、世間的にはまだ、ファンによる人気投票という以上にはその意味が理解されていないような気がするので、あらためて説明したい。

●AKB48のシングルは通常、AKBメンバーのなかから総合プロデューサーの秋元康らスタッフの選んだ「選抜メンバー」によって歌われている。これに対し、総選挙実施直後のシングルでは、AKB48グループ(SDN48を除く)の全メンバーが順位しだいで参加できる可能性がある。
●総選挙では順位により、21人の選抜メンバーが選出される。このうち上位12位までのメンバーは「メディア選抜」として、テレビや雑誌などさまざまなメディアに優先的に出演できる。また、22位~40位にランクインしたメンバーは、新曲のカップリング曲を歌う「アンダーガールズ」に入ることができる。
●総選挙の投票には、6種類の方法がある。もっともポピュラーなのは、最新シングル「Everyday,カチューシャ」の通常版CD(カップリング曲の異なるType-AとType-Bがある)に封入された投票シリアルナンバーカードの番号を、投票用特設サイトにて打ち込むという方法。このほか、AKBのファンクラブサイト「柱の会」会員、AKB・SKE・NMBの各Mobile会員、動画サイトDMM.com内の「AKB48 LIVE!! ON DEMAND」の月額見放題会員も、それぞれ特設サイトから投票が行なえる。

簡単に説明すれば、こんな感じだろうか。せっかくなのでこの記事では、いま投票を考えている人に参考になりそうな本や番組などをいくつか紹介しておこう。

■本・ムック
総選挙関連本といえば、まず『AKB48総選挙2011公式ガイドブック』(講談社)。この本には選挙のシステムをはじめ、総合プロデューサー・秋元康へのインタビュー、そして各メンバーの紹介が収められている。データが満載なので、AKBのことをあまりよく知らない初心者にもメンバーについてよく理解できるはずだ。ちなみに、ぼくの手元には、一昨年の総選挙の公式ムック(選挙後に出たもの)があるのだが、2011年版はそれよりも50ページ近くも増えていた。年内には福岡にもHKT48が誕生する予定だし、この分だと数年後にはコミケカタログ並みの分厚さになっていそうである。

このほかメンバーについて知るには、各界の著名人やAKBの関係者らが各メンバーについて思いのたけを語った『別冊宝島 AKB48推し!』(杉作J太郎や村上隆などといった文化人たちのなかに混ざって、AKBの現役メンバーの指原莉乃が先輩の中田ちさとに語っていたりする)や、SKE・SDN・NMBのメンバーもふくめ全撮り下ろしと銘打った『FLASH増刊 まるっとAKB48スペシャル』も参考になりそうだ。

AKBというグループの全体像や歴史をもっと知りたければ、週刊プレイボーイ編集部編『AKB48ヒストリー 研究生公式教本』(集英社)がある。ペーパーバックサイズのコンパクトなこの本には、2005年の結成以来、今日までにいたるAKBの歩みが、メンバーの証言を交えてつづられている。一読すれば、彼女たちはじつに多くの試練を乗り越えていまの人気を獲得したのだなー、と感慨を抱かずにはいられない。

選抜総選挙については、2009年の第1回総選挙での佐藤亜美菜のエピソードがとくにドラマチックに書かれている。個人的にこれまであまり気にしていなかった子だけれども、中間発表、そして開票にいたるまでの彼女が背負ってきたものを知ると、やはり感情移入してしまう。

■ドラマ
AKBのドラマでの代表作というと、現在テレビ東京系で第2シリーズが放映中の「マジすか学園」があげられる。メンバーそれぞれのキャラクターを生かした配役で、ヤンキー同士の抗争を描いたもの。大映ドラマテイストも盛りこまれていたりして30~40代以上にはちょっと懐かしさを感じさせたりもする。

同じくSKEも、今年1月から3月にかけて中京地区で「モウソウ刑事」(東海テレビ製作)が放映され、DVDも順次リリース中である(Vol.1はレンタルも始まっている)。名古屋の劇団あおきりみかん主宰の劇作家・鹿目由紀の脚本によるこのドラマでは、終盤、ちょっとメタ(自己言及的)な展開が見られたりするので、まだ見ていない方はDVDの続きをお楽しみに。

「マジすか学園」も「モウソウ刑事」もどっちかというと群像劇という性格が強いのに対し、各メンバーのキャラクターによりスポットを当てたのがNHK-FMで隔週金曜に放送中のラジオドラマ「AKB48の私たちの物語」だ。毎回出演するメンバーにインタビューを行なったうえで、ドラマがつくられているというのがいかにもNHKらしい。たとえば、増田有華演じる大阪のたこ焼き屋の娘が歌手をめざすという物語では、彼女が幼少期に大病で生死の境をさまよったという実話などが盛りこまれていて泣かせた。

■バラエティ
いまやAKBメンバーの出演しているテレビ番組はたくさんありすぎて、いちいちあげていくときりがない。ここでは1本だけ、読売テレビ製作の「AKBと××」を紹介したい。月イチで放送中のこの番組を、たまたま大阪出張の折にホテルのテレビで見られたのはラッキーだった。

AKBのメンバーが毎回さまざまなテーマに挑戦するというこの番組では、主にメディア露出がまだ比較的少ないメンバーたちが出演しているのだが、そこにAKB全体でのリーダーというべき高橋みなみが加わることでグッと締まった印象を受けた。

ぼくが見た回では、高橋が大阪府内の農村、片山陽加が和歌山県内の漁師町を訪れ、家々をまわってはそれぞれ好きな食べ物をつくってもらえるよう交渉するという企画が面白かった。このうち片山は「半日置いた大根おろしをかけたジャコ飯」とまた渋いものをリクエストし、一度はジャコ飯にありつきながら、大根がおろしたてのものだったのでゴールと認められずかわいそうだった(いや、思わず笑ってしまったけど)。

このほか大阪だけに、地元を拠点に始動したばかりのNMB48の出演するコーナーもあり、途中に流れるAKBの主要メンバー出演の兵衛・向陽閣のCMとあいまって、ローカル色を感じさせる番組だった。すでにDVDもVol.1、Vol.2と、オフィシャルサイトと全国のAKBショップで発売されている。

■番外:総合プロデューサー・秋元康という人
最後に、AKB48の総合プロデューサーである秋元康にあらためて興味を持ったので、古本屋から彼の自伝的小説『さらば、メルセデス』(マガジンハウス)を取り寄せて読んでみた。

奥付を見ると、1988年10月発行(昨年のAKB総選挙で第1位に選ばれた大島優子が生まれた頃だ!)とまさにバブルのまっただなか。それだけに、やや時代を感じさせる表現がところどころに見られるのは否めない。しかし著者は、売れっ子となった現在の自分に対してきわめて冷めた視点を持っているし、過去についてもきわめて客観的に振り返っているところも好感が持てる。

たとえば、大学に通いながら駆け出しの放送作家として多忙な日々を送っていた頃のエピソード。師匠筋にあたる放送作家から、最近仕事で手を抜いていることを指摘され、《おまえは、人が悪いんだよ。メリット、デメリットを計算して行動するだろう? これはまずい、という所は手堅く仕事をするくせに、ここなら平気という所は手を抜くっていうのは、もう、人間性の問題だぜ》とまで言われてしまう。単なる苦労話ではなく、こんなふうに先輩に叱られた経験をさらりと書けるというのは、信用できるのではないか。この本、いまではポプラ文庫で読めるみたいなので、AKBのメンバーたちにも読まれるべきだと思った。(近藤正高)